2017年08月05日

顔で嫌われる女

紙の新刊です。本日発売「家庭サスペンス」(笠倉出版社)に『顔』が再録されています。
会社の上司に顔を嫌われ、とことん追い込まれる部下の女性の苦悩を描いたサスペンスです。
たかが顔で、女は顔を気にしすぎると言われても、男性にも顔で人に嫌われる苦労はあります。

実はこの話の着想は森鴎外の『阿部一族』から得ています。
熊本藩主の細川忠利に嫌われて殉死を許されなかった阿部一族が滅亡する悲劇を描いた名作です。
勿論作品として比較にもなりませんが、ストーリーを考えていた時に頭に浮かんだのです。
阿部弥一右衛門は細川忠利によく仕え、小姓だった頃から気が利いて、言われなくても働くのですが、
忠利は何となく気に食わず「この男の顔を見ると、反対したくなる」、非は自分にあると思っても
言うことを聞けない癖を直せず、病床について死ぬまで殉死を許しませんでした。許しがなければ
勝手に殉死できません。その結果命を惜しんだ男と侮辱され、最後は一族滅亡まで追い込まれます。
青空文庫で無料で読めますので、興味のある方はどうぞご利用下さい。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/673_23255.html

私の漫画では、現代の会社員の上司と部下の悩みになっておりエピソードは全てオリジナルです。
どこが似ているかと言えば、悪人ではないのに、よく働くのに、それでも憎まれる理不尽さです。
阿部弥一右衛門と違い、きつい顔、特に釣り目が上司に嫌われたと理由を絞り込んで、分かりやすく
描いています。最後まで似ても似つかないエピソードと会話の連続で、結末も違い、ヒントにした
とさえ気づかれないと思います。現役の作家の小説だとしても、問題になる部分は全くありません。
しかし最初の着想が大事で、それがうまくできると人物が動き出します。
そういう意味ではやはり先人の功績はありがたいものです。
posted by 183 at 12:43| 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする