2016年09月22日

コネも大切

誤解されるかもしれませんが、漫画家なんかになるなと脅しているわけではありません。
自分を省みれば、デビューするという確信のようなものがあり、すでに決まっている未来から
逃げられないような感覚でした。漠然と夢見ているのとは違います。そういう段階の志望者を
どう脅しても無駄でしょう。
ただ、やるならやり方を考えて、もっとうまくやればよかった、という悔いはあります。
投稿時代にアシスタントを経験しておいた方が色々な意味でよかったのではないかと思います。
漫画の商業誌はアンケートしだいですが、広告やカット、人の手伝い等、周辺の仕事は紹介で
決まることが多いので、人間関係を作っておくことは大切です。アシスタント経験はコネを作る
のに役立つでしょう。絵がうまい下手の問題だけではありません。私も昔カットの仕事の営業を
したことがありましたが、その時は何種類もの絵柄のポートフォリオ、菓子折りを持って行っても
空振りで、後で知り合いの先生が都合でできなくなった仕事を紹介してくれた時は、即決でした。
商業誌の仕事が難しい時でも、そうした細かい仕事でそつなく収入を確保している人は強いです。
「おしゃべり女禁止令」でも書きましたが、勿論、噂陰口はチャンスを遠ざけます。
アシスタントは口が軽くない方が信用できます。あ、それは漫画家も同じです(汗)。
ネットもデスノートみたいに人を陥れる書き込みはしないことです。
いざとなれば誰だかわかりますから。
「漫画けもの道」記事一覧はこちらからどうぞ。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 18:39| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月21日

中高生に知ってほしい厳しさ

HPにもBlogのページを作り、過去記事へのリンク、「漫画けもの道」の一部を基礎情報として
公開しています。本当は私は身辺暴露が大嫌い、プライバシー非公開で、愚痴泣き言は書きたく
ありません。書かれる側のことも考えますし、面白半分の見せ物になる趣味もありません。
しかし経歴を書かずにただ商品だけ並べていても、勝手に妄想をたくましくしてデマを流す人も
います。妬みも差別もあります。ですから仕事の厳しさが伝わるようにデビュー後の経験を書き
ました。一部をブログからHPに転載したのは、漫画家に憧れる中学生や高校生にも読めるように
するためです。HP以外のサイト、ブログもTwitterもnoteも、配信サイトも、全てフィルタリング
の対象で、子供に出会い系など見せたくない保護者がフィルタリングを解除しないと読めません。
新人の待遇は会社によって、雑誌によって違いますが、志望者の予想より厳しいと思います。
それを知った上で、最悪の事態でも生活に困らない準備をした方がいい、ということです。
しかしさすがに全文は転載できません。子供が無制限に読めるサイトを持っておらず思案中です。
とりあえず、デビュー後の1年目の金銭事情だけは読んでおいてほしいと思い、選びました。
と、これをブログに書いても、高校生は読めないのですがHPは読めます。子供が憧れているなら
読むように教えてあげて下さい。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 14:01| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月04日

スパルタ編集

肝心なことを忘れていました。これから漫画を本格的に描こうと志す人には興味ある話だと
思いますので、まとめて書かせていただきます。

今はネットで漫画を公開でき、販売も個人でできます。出版社からいきなり単行本化される
幸運な人もいます。誰でも色々な形で作品を発表できるのはいいことだと思います。しかし
ネットだけでは鍛えられません。基本を教えてくれる人がいないからです。やはり投稿した
方がいいですし、その前に学校で学んでもいいでしょう。

私はネットも使い、大手でもマイナーでも描いてきましたが、特にデビューした大手で厳しい
打合せに苦しみました。まず、一度でネーム(台詞入りのラフ)が通ることはなく、全く別物
と言っていいほど大幅な修正を求められ、頭が混乱し、自分を否定されたようで感情も傷つき、
修正する気力が萎えてしまい、しばらく休まないと取りかかれないこともありました。

以前、タイトル20本出し、という話を書きましたが、内容も、ネーム5回直し、完全な別物に
作り直し、ということもありました。内容の練り直しもあれば、コマ割りや見せ方、言葉遣い
の修正もあります。絵ができてからの描き直しもあります。大物になると、担当編集者にも
よりますが、修正されなくなると聞いたことがあります。しかし最初のうちは、自分の作った
ネームは跡形もなく壊されるものと覚悟した方がいいでしょう。あえて完成していない大雑把
なネームを出して、編集者と打合せながら作る人もいます。そのやり方に慣れて、別の会社で
未完成のネームを出したら怒られた、という話も聞きました。最初に打合せのやり方を確認
した方がいいと思います。

それ以前に厳しく注意されるのは、パクリです。私がたまたま読んだばかりのベストセラーの
話を打合せで出したら「それをなぞってどうするの?」と編集者に言われました。なぞる気は
なく、話のつかみに出しただけなので、そう説明しましたが、ヒットしたドラマや有名な小説
や映画のストーリーをすぐ連想させる話は、通りません。著作権法では問題にならないような、
おおまかな設定やストーリ―の類似でも、勉強している編集者ほど敏感で、嫌います。
著作権法の線引きとは別で、よほど自分のオリジナリティが図抜けていないと評価されません。
同人出身や、大手経験のない人には、いつまでたってもパクリに無頓着な人がいます。大手に
持ち込んで、プロと認めない、と言われた人もいますが、教育が違うので仕方ありません。

コマ割りも、やはり大手が厳しく、バストアップと台詞ばかりというコマ割りでは通りません。
1〜2ページバストアップ(上半身だけ)では必ずリテイク(直し)になります。下絵まで描いて
見せて、バストアップが多いとリテイクです。量産する人には、バストアップだけで40ページ
といった、露骨な手抜きのコマ割りをする人もいますが、大手では時間がなくても直されます。

特に直しが多い編集者との仕事に慣れて、自分でネームができなくなり、他社への持ち込みに
ひるむ人もいます。自分でネームを切らせる編集者とも仕事をした方が、バランスが取れます。
配信に使っている作品は、ほとんど自力で作ったものですが、それができたのは最初に基本を
教えてもらえたからで、感謝しています。
posted by 183 at 14:04| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月03日

新人時代の裏話を整理

「漫画けもの道」と題してブログに連載していた新人時代の裏話をHPに日付順に並べて整理
しました。思いつきで書き始めたため、内容が重複、前後していましたが、重複した記事は
リストから外しました。残した記事を上から順に読んでいただくとわかりやすいと思います。
今は助成制度が色々あり、新人賞の賞金も上がりましたので、少し事情が違うと思いますが
同人と違って自由にやれるものではないこと、掲載されなければ無収入で経済的に厳しく、
精神的にも不安で、創作に没頭するのは容易でないことを、覚悟してほしいと思います。
デビュー前に貯蓄し、周囲の理解を得ておくこと、できれば他に収入減を確保しておくこと
をお薦めします。兼業は通勤時間も計算に入れて体を壊さないように、食事は抜かないように
気をつけて頑張って下さい。日陰者の厳しい話ばかりですが、ご参考になればと思います。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 19:25| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月25日

無法地帯

今頃HPに大幅に加筆し、漫画けもの道のような文章を続けて書いたのは、やはり自分で
書かないとどういう仕事をしてきたか理解されないということがわかったからです。
簡単な略歴、時々ブログに書いた記事だけでは、読む人は少なく検索されることもなく、
特にHPさえろくに見ない人の上から目線の書き込みや甘えたメールには閉口しました。

ありがちですが、自分の好きなことを遊びながらやっているような思い込みは迷惑です。
繰り返し書いた通り、仕事を取ることから競争で、間違っても遊び気分ではできません。
働き方については、人により違いますが、労働基準法は適用されず、アシスタントも
事実上漫画家と同じようなものです。無理に働かされて亡くなった人も知っています。
私は明け方の4時に電話で起こされて、これから来いと言われたことがあります。行けば
徹夜続きの修羅場です。その時は自分の締切明けでしたのでお断りしましたが、誰かが
代りに行ったはずです。どうなっても自分の責任です。
亡くなったり病気になったりする人の話は抑えられてあまり表には出ませんが、実際ある
ことです。身体がきついなら、やめるに越したことはありません。それでも腕があれば
使ってくれるところは見つかります。やめる人の多い、人がいつかない仕事場は、実は
有名です。学校を出たばかりのあまり内情を知らない人が連れてこられることもあります。
どんな法律ができようと、徹夜も飯抜きも止められないでしょう。間に合わなければ仕方
ありません。徹夜する時は必ず何か食べるか、コーヒーでなく牛乳や液状栄養補助食品を
飲むくらいはして、急性心不全を起こさないように注意することです。

漫画を漫画家が好きに作っているという勘違いも迷惑でした。同人誌やネット漫画と違い
出版社の編集者の判断で掲載が決まることくらいは知ってほしいと思います。他の仕事と
同じく、1人で自由に楽しみながらやれるということはありません。仮に編集者が好意的
でもお客である読者の反応が悪ければ1度で終りです。編集者も失敗すれば責任を問われ
ます。読者は自分の思うように動く子分ではなく、手ごわく難しい世間そのものです。
もし自分の希望する漫画がないと思うなら、突然知らない漫画家にメールを送りつける
のではなく、自分で企画書を作って出版社に持ち込んで下さい。漫画家には次の仕事が
ないかもしれません。プロになっても何の既得権、保証もありません。
絵が描けないなら、原作でもいいと思います。他人に頼るのはやめましょう。

貧乏漫画家のために国があるわけではない、という批判もありましたが、国の補助など
一度も受けたことはありません。漫画は浮き沈みが激しく、貧乏な時もあれば、春には
もう1年分稼いでしまって今年働かなくていい、と思う時もあります。それでもその場で
使い切るようなことはせず、蓄えて増やしたからここまで生きてこられました。景気の
浮き沈みも勉強すれば読めるようになります。財テクで損をしたことはありません。
若い女性漫画家やアシスタントには何も備えないで結婚を当てにする人が時々いますが、
当てが外れてどうなっても自分の責任です。非モテの私は、王子様に期待せず、年金が
もらえる民間の保険にずっと昔に入っています。

職業選択の自由があり自分で選んだからこそ他人を責めることなどしません。しかし他の
仕事でも、会社員でも、選択できるのですから、漫画家だけが自己責任のように言われると
それはお互い様だろう、と思います。漫画家なんか選ぶ奴がバカ、と思うのは勝手ですが、
言われなくても誰のせいにもしたことはありません。逆に、俺の仕事は苦しいのに漫画家は
楽でいい、というやっかみも勘違い、迷惑です。

こうした基本情報をまとめて出した方がいいと考えて記事を書きました。

これまでの「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 12:43| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月24日

段ボール追放その後

ご心配いただいた段ボール追放漫画家は、その後別の会社でご活躍で、もしかしたら以前より
稼いでおられるかもしれません。
ただ、これまでも書いたように、編集長が交代し作家を入れ替えるということがあります。
一生懸命な人が粘るのは当たり前ですが、一生懸命さが求められているわけではありません。
誌面刷新するために必要な作家を集めたいので、作風の固まった人を切るのは仕方ないかも
しれません。編集長が替る時に、担当から、続くかどうか言われます。次はないから他へ行って、
僕なら使うけど、上の考えだから仕方ない、と言われたことがあります。
また不況の時は売れないため予算も少なくなり、原稿料の安い若手、新人と、単行本が確実に
売れるスターが使われて、中間の、原稿料が半端に上がっている人が先に切られる傾向があり、
下げないと使ってもらえません。下げたら仕事のクオリティが維持できないと思う人は諦めて、
掲載は再録になります。今はそういう時です。個人の力では変えられないこともあります。
それにしても段ボールは非情です。しかしその人はすぐ次を見つけてバリバリ描き出しました。
そして少しでも高いところへ移っていきました。
漫画家を続けられるのはそういうタフな人です。必要なのは芸術的才能だけではありません。

これまでの「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 12:56| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月23日

牙をむいたライオン

この記事は特定の人物や団体を批判するために書いているわけではありません。あくまで
一特殊経験者の偏見に基づいて再構成したものです。あえて時系列を入れ替えたり複数の
エピソードをまとめたり、他人のプライバシーを晒さないように注意して書いています。
似たような経験を違う雑誌ですることもあります。そういうものとしてお読み下さい。
また自伝でもありません。私が直接経験していない聞き書き(噂ではない)も含みます。

ある雑誌で長年貢献した、当時まだ固定ファンのいた作家が編集部に呼び出され、段ボール
に入れたその人の原稿を渡されて「これ持ってどこでも行って下さい」と言われました。
原稿を返すというのは、会社によってやり方の違いはありますが、もう掲載しないという
意味になります。単行本や再録、配信の予定があれば返しません。ただし単に原稿を返さ
ない会社もあります。返す原稿と返さない原稿がある場合は、返さない原稿はまだ使いたい
ということです。私の経験ではそうです。返してくれと言えば返してもらえますが、波風
を立てないように気を使います。悪くすれば、そこではもう仕事しませんという絶縁宣言
と受け取られてしまいます。
段ボールに原稿を詰めて呼び出して追い帰す、というのは、二度と使わないという意味
なります。そこまでしないと、また企画書を送ってくると思ったのかもしれません。
それにしてもやられた方はたまりません。漫画の出版社ではそういうこともあります。
急に呼び出して段ボールを渡して追い帰す、というのは、リーマン・ブラザーズが破綻した時
社員にした仕打ち
です。私物は全部箱に入っていて、もう会社に入れないようにされました。
そうでもしないと情報持ち出しなどの報復をされかねないからでした。
そんなことは日本の企業はしないと聞きましたが、漫画家はされます。
リーマン・ブラザーズは倒産しましたが、出版社は違います。漫画家の切り方だけが米国並
ということを、知っておいた方が楽だと思います。酷いことを言われたりされたりしても、
そういう話はいくらでも前例があると思って、軽く受け流すのが一番です。それでもその後
段ボールを渡された人は描いています。そう簡単にやめる人はいません。どんなことをしても
とことん粘るのが当たり前です。優しそうな話を描く人も、牙をむいたライオンです。

私が病気した頃、休刊が続いて雑誌が減っていましたが、一方で中堅やマイナーでホラーや
お笑い漫画ブームが続いていました。ホラー、恐怖、怖い、ミステリーと題した雑誌の中で、
占い漫画ではない大人向けの心理サスペンスを描ける雑誌を見つけました。読んで面白いと
思う雑誌、が基準です。私は原稿料が上がっていたものの、ページ2万貰う人もいる大手では
安い方でしたから、あまり差がなく、大手の方が安いところもありました。読者年齢がやや
上がり、例えば30歳のOL(当時の言葉)、40代の主婦、という注文はありましたが、それまで
では比較的描きたいものを思うように描けるようになり、量産できませんが続けられました。
しかし、病気で大手に切られたわけではありません。そこは誤解されると人聞きが悪いので
断っておきますが、復帰後もまた大手で描いていましたし、仕事が重なってお断りすること
もありましたが、わざわざ予定を変えて描かせていただこともあります。ただ私自身が自分
の軸足をもともと描きたかったラブコメではないサスペンスに移したということです。
その後は自伝でないので省きます。出版不況はますます厳しくなり、コンビニに並ぶ漫画も
激減しました。すでに生活できるだけの蓄えのある人は無理しませんが、若い人は大変です。
これから漫画を描く人は、大きな社会の動きにも注意して、先を見て考えて現実的に計画を
立てて、少しずつでも自分の描きたいものを描いていってほしいと思っています。

これまでの「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/

posted by 183 at 12:13| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月22日

極限のセーフティネット

大きな運命には抗えない、と書きましたが、全くその通りで、最初にラブコメを描いて3位を
取った少女漫画誌もなくなりました。好きで潰れそうな雑誌に投稿したわけではありません。
80年代後半はバブルの上り坂、漫画も売れ、投稿した雑誌には漫画愛好家なら知っている
名作が連載され、私が掲載された時も続いていて、潰れると思えませんでした。デビュー後
女性向けは男性向けより不振と聞きましたが、読者にそこまでわかるはずもありません。
ネットもなく、検索で部数を調べることもできませんでした。何よりファンだった大御所に
惹かれて投稿しました。激しい競争の中で、もう少し結果を出して、そこだけに絞っていたと
しても、やはり描いていた雑誌が潰れてレギュラーを失う結果は変えられませんでした。
その後は新雑誌や別の雑誌に移って実績を上げるしかない、ということです。

しかしその前に身体を回復させないといけません。その頃まだネットは普及しておらず、電話
が交流手段でした。時々電話をもらったりかけたりする漫画家が数人いました。漫画家以外の
知人とも、たまに話すことはありました。体調を崩した時にも、たまたま電話をかけてきた人、
かけた人がいました。近況を話す時、腱鞘炎で描けないと、わかりやすく説明し、それ以上は
あまり余計なことは言いませんでした。他人にどうこうできることでもないと思ったからです。

漫画家でなく安定した生活をずっとしている知人たちも、皆温かい言葉をかけてくれました。
「何かあったら相談してね。今度ご飯でも食べようよ。」もちろん、気持ちを感じました。

漫画家の知人は、電話の翌日宅配便で荷物を送りつけました。ダンボールに、米と保存食、菓子、
暇つぶしの本とCDが入っていました。電話をかけると「これで1か月大丈夫だろう。私が描けなく
なった時に、漫画家の友だちがしてくれたことで、その友だちも漫画家の友だちに同じことを
してもらったので、順番だから返さなくていい。次の人にしてあげればいいから。迷惑だったら
捨てるか譲るかしてくれればいい」という話でした。その人と特に仲が良いというわけでもなく、
他にも米をくれた人がいました。漫画家は互いに困り方を知っているため、即時、即物的です
仕事切れには編集者を紹介する、自分がアシスタントに使う、という支援もよくあります。

漫画家は個人事業主です。病気や倒産で仕事が切れた時の保証はなく、自分で保険に加入しない
限り、失業給付も受けられません。
私は生命保険に加入していましたが、入院しないと支払われ
ませんでした。通院でも支払われる契約も、今ならできますが、当時はありませんでした。
ですから1ヶ月分の食糧はありがたく頂戴しました。そしてさらにその後、同じ人から電話があり
「健康診断に行くから待ち時間をつぶすのにつきあってほしい、ついでに診察も受けたらいい」
と誘われました。保険証を持って出かけた病院は、漫画家御用達でした。カウンセリングも
学んだ医師で、生活相談ができる人で、友だちの漫画家の紹介、また紹介で、教えられました。
悪いのが腕だけでないことがわかりました。支払いは誘った知人が問答無用でしてくれました。
断ってもききませんでした。いわくそれも順番です。私も後年業界の知り合いに、いくばくかの
支援をしたことはありますが、恩に着せるつもりなどありません。気を使ってお返しをするより
あるものは順番に回すのが合理的です。

近所の鍼灸院に藁にもすがる思いで入ったのは正解で、痛みが緩和しました。少しずつ体調を
回復させて、バイトをしながら、1年以内に復帰すると決めていました。それは実現しました。
漫画家は倒れても自分で立ち直るしかありません。セーフティネットは同じ漫画家の助けです。

これ以前の「漫画けもの道」はこちらに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/

posted by 183 at 12:28| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月21日

大きな運命には抗えない

会社員兼業をやめ漫画専業になって1年後に会社が潰れました。運命とはそういうものだと
思います。自分の考え、努力である程度の違いは作れても、大きな変化には抗えません。
例えば雑誌が休刊になる、編集長が交代して作家を入れ替える場合もそうで、前の編集長に
抜擢された人は、まとめて切られます。人気連載や看板作家は別としても安泰はありません。
色々な経験を重ねて、その時どうするか考えて選択します。その繰り返しです。

漫画専業になってしばらくは、編集者の企画、注文で占い漫画を描いていました。大手で
かけもち、どこも1年後まで予定が決まっているという安定した創作環境を初めて手に入れ
ました。
ただしそれは占い漫画という人気企画に助けられていたからでもあります。
しかし実用コミックとは違い、ミステリーに占いを取り入れるという形で、特定の占い師の
監修はありません。売られている本を参考に、漫画的な誇張を大いに加え面白く描くことが
課題でした。実用ではなくストーリー漫画でしたから、やりがいはありました。原稿料も
この時期に上がっていました。アシスタントを使っても生活できました。バブル以後出版が
好調で、大手から増刊や新雑誌が出ていたという幸運にも助けられていました。

しかし、それは間もなく終わります。
最初に占い漫画を描いた雑誌は休刊になりました。大手の雑誌で、人気もあり、長く続いて
いたので、潰れるとは思わず驚きました。その2年後に占い漫画でシリーズをやった雑誌が
休刊になりました。編集長も異動し、人事は漫画家も含めて刷新されました。前編集長時代
参加した私もですが、同じ頃にデビューした新人、若手は、描く場所を失いました。さらに、
別の占い漫画を描いて受けた雑誌も休刊になりました。残った雑誌にはレギュラーがいます。
また休刊した雑誌とは編集方針も違います。そこに新たに企画を出して仕事を取ることも
できましたが、また別に描く雑誌を探しました。占いの実用漫画なら機会はありましたが、
占いなしでミステリーを描きたいと思うようになっていたため、ネームを作り営業しました。
勿論私に圧倒的な人気があれば営業しなくても抜擢されていたと思います。しかしそれでも、
雑誌の休刊は変わらず、同じ傾向の作品を続けて描くことは不可能でした。続けたければ
他に場所を探して移ることになります。連載途中で掲載誌が変わるのは、何かしらそうした
事情があるためです。

その頃新規開拓した雑誌に原稿を渡した直後、腕の痛みが尋常ではなく、指が動かせなくなり
体調も悪化して休むしかなくなりました。幸いその前に数年好調で、会社員時代の蓄えもあり
生活にすぐ困るというほどではありませんでしたが、もって1年程度で、余裕はありません。
税金も保険料も容赦なく前年度の所得を元に請求されますし、奨学金の返済もあります。完全に
働かないというわけにいかず、右手に負担のかからないアルバイトと貯蓄の取り崩しで生活
していました。しかし治る見込みがあるわけでもなく、仕事は切れたままで、やる気がないと
見放されていたでしょう。心理的にはどん底でした。そういう時のための貯蓄は欠かせません。
お金を使わず切り詰めて貯めていたことは幸いしました。

これ以前の「漫画けもの道」はこちらに一覧にしています。
「病気休筆前後」は内容が重複しますが、合わせてお読み下さい。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 12:57| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月19日

極限状態の兼業生活

前回は会社員と漫画家の兼業になるまでを書きました。
募集時の説明通り、ほぼ9時5時の勤務でした。そうは言っても、掃除は毎日新米の私の担当で
遅くても15分早く出社しないといけません。そして帰りも、軽い掃除とゴミ集めをし、ゴミを
出してから帰宅します。また、やはり時には残業もあります。
問題はそれ以上に通勤時間が長かったことです。面接の時は昼間だったため1時間20分で行けた
のですが、ラッシュアワーは乗降に時間がかかり混雑します。道路は渋滞し、バスも遅れます。
混雑する時間帯には1時間45分、天気が悪いと2時間かかります。そしてもちろん、座れません。
会社の仕事は一般事務と秘書的業務を兼ねたもので、きつくはありませんがミスはできません。
緊張して働き、帰宅するのに立ちっぱなしの2時間は疲れました。朝のラッシュはもっとひどく、
押しつぶされて死ぬかと思う混雑でした。通勤地獄とはよくいいました。その上、帰宅してから
漫画描きです。勿論時間が足りず、締切り前は徹夜になりました。徹夜して原稿を送りラッシュ
アワーの通勤地獄で立ちっぱなしで、出社するとすぐ掃除、デスクは丸見えで隠れて居眠りも
できず、背筋を伸ばして仕事です。締切り前は、3日間、一睡もせずに働く羽目になりました。
漫画家だけなら締切明けに爆睡できますが、会社員兼業では寝られないままさらに1日仕事です。

これを覚悟しないといけません。考えたつもりでも、甘いところがありました。

その時期に限って、奇妙な現象が続きました。テレパシーと言われる能力が身につきました。
徹夜してフラフラで電車のつり革につかまっている私の耳元で「東十条」と囁く声が聞こえます。
それは、斜め前に座って寝ている女性の声だと、なぜかわかりました。そこで降りるという意味
です。私は半信半疑で移動して彼女の前に割り込むようにして立ちました。すると彼女は本当に
東十条で降りたのです。私は空いた座席に座ることができました。また別の時は、初めて会った
編集者の印象が悪く話が合わないので、仕事にならない、やめて他へ行こうと思っていましたが、
夢にその人が出てきて、しきりに催促するのです。そこで、ちょうど作っていたネームを送ると
即採用、その後順調に仕事ができました。慣れると打ち解けてやりやすい人でした。
まだあります。どうしてもやる気になれない仕事があったのですが、夢に編集者が出てもういい
と言うのです。非常にリアルで、やらなくていいのかなと思っていたら、3日後に同じ人が、
もういいと、夢と同じ声で言ったのには驚きました。そういうことが時々あり、常に助けてくれ
ました。休めるように、お金がもらえるように、少しでも楽になれるように、ガイドしてくれて
いるようでした。それは声として聞こえることが多く、時には絵で見えることもありました。目
の前に、ポンと少し先の光景が見えるのです。最初は戸惑いましたが、やがて予知能力のような
ものが働いているのを意識するようになりました。この現象は、無理な兼業をしている時に起き
兼業をやめるとなくなりました。それでも、以前よりカンが働くことは変わりません。
今考えると、心身共に極限状態の時に、生命を守るために通常必要ない能力を発揮できたのかも
しれません。
そうした話を受けつけない人にまで押しつけるつもりはありません。
偶然勘が働いた、と理解していただければ結構です。
以後、必死で生きようとしている自分の体を自ら傷つけてはいけないと心しています。

無理な兼業をしながらも、精神状態は以前より安定しました。ただ、漫画がなくなれば9時5時の
ルーティンワークで、その先の見通しは何もありません。どうしても漫画は続けたいと思って
いました。そして、幸運にも読切りと並行してショートの連載の仕事が決まりました。
その時私は思い切って会社を辞めました。打合せの時間も取れず、兼業は無理でした。編集者は
心配しましたが、1年後にその会社が倒産し、どの道私は漫画を描くしかなくなっていました。

兼業で漫画を描くなら、通勤も計算して勤め先を選んで下さい。
これが私の得た兼業生活の教訓です。

これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 12:10| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月18日

年間200ページの低所得者

確定申告をしながら思い出します。
最初の頃の年収の低さを。上がって、また下がっても、まだ最初の原稿料収入よりは上です。

さて、デビュー間もなく、担当編集者に言われました。以下言葉はそのままです。
「見開き2頁に王子様が出てきて、ヒロインが王子様と結ばれる話を年間200ページ描け、
それが嫌なら今すぐやめろ。」

ファンタジー系やホラーなら、要求が違うと思いますが、メジャーの一般向け少女漫画では
そうでした。担当編集者による違いもありますが、最初はラブコメで確実にアンケートを取る
のが常道だと思います。人気が出ると、自分の温めていた得意なネタを出して幅を広げます。
独特の作風で知られるベテランも、最初はラブコメで、初期作品集を見て意外に思うことが
あります。昔から、少女漫画は最初はラブコメです。苦手と言っていられません。

年間200ページは、それだけ描ければ認められるという目標です。32ページの読切りを隔月で
描くと192ページです。40ページの読切り5本で200ページになります。
これは、新人から見れば上出来、充分と言っていい仕事量です。コンスタントに描いている
漫画家と名乗れます。ただし当時の原稿料は5000円(大手でも3500円の雑誌もありました)
ですから、200ページ描いても100万円です。当時そこでは、1年で1000円、2年でまた1000円
上がり、7000円までは誰でも原稿料が上がりました。それ以降はヒットがあれば上がりますが
なければ据え置きです。2年以内に連載を取ってヒットを出さないと生活費を稼げません。
7000円で月刊誌で連載しても、32ページでは2688000円です。ここから必要経費が出ますから
連載作家でも生活は厳しいと思います。コミックスが出ても印税は10%です。単価500円として
初版1万部で印税は50万です。増刷にならなければ原稿料1本分程度のボーナスです。
売れないと次のコミックスは出ません。2巻以降が出ないということもよくあります。
どこまでも試練が続きます。

それでも、そこまで行ければ他に売り込みもやりやすいので、当面の目標はまず連載です。
しかし私の場合は、1年過ぎてやっとアンケート3位、それで次の掲載予定はないと言われ、
数か月後の会議で通れば掲載するということでした。次の会議で通りましたが、到底生活
できませんし、奨学金の返済も抱えていました。3位で次がないと言われた時点で、これは
ダメだと自分なりに判断し、次の手として、そこでのネーム、他への持ち込み、カットの
持ち込み、アルバイト、パソコン・ワープロスクール通い、漫画と両立できる短時間勤務
の職探しを併行してやりました。そして同じ会社で仕事をつなぎながら、9時5時の事務職と
兼業することにしました。
漫画だけを見ると順調に行かなかったわけですが、それでも今思うと努力しました。

これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/




ラベル:漫画
posted by 183 at 12:04| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月16日

タイトル地獄

投稿時代とデビュー後の打ち合わせの厳しさの違いは想像以上でしたが、タイトルのつけ方も
一段と厳しい指導を受けました。タイトルを考えるのが苦痛になるほどでした。

タイトル20本出しを寝ずにやらされました。それで決まったタイトルが、別の大御所の先生と
一語かぶるから変えろと言われ、また20本出しをさせられました。最初から複数のタイトル
を出して、その中から選んでもらえればいいのですが、そうでない場合はタイトルだけで1日
以上かかってしまいます。よく、プロの漫画家が締め切りを遅らせる、破る、という話を聞き
ますが、それは、プロット、ネームの段階でなかなかOKが出ず、スケジュールが押して、予定
していたアシスタントにも来てもらえなくなり、人数不足で徹夜しても間に合わなくなるから
です。誰も破りたくて破るわけではありません。その上タイトルも決まらないと難渋します。
編集者の提案するタイトルがどうしても自分の気に入らず、投げたくなることもありました。
学生時代からのアマチュア仲間にバカにされるような甘い言葉を入れることもありました。

タイトルひとつで人が見るか見ないか決まる、アンケートが違う、売れ方が違うのは事実です。
それを徹底して教えられました。比較的読者年齢が低いほど厳しかったように思います。
読者が大人ですと、まだ地味なタイトルでも渋好みで読んでもらえますが、それでもタイトル
しだいで差がつくことを意識しないわけにいけません。甘い雑誌もありますが甘えられません。
デザイナーに「私には権限がないが、この雑誌はタイトルのつけ方が甘い」と忠告されたこと
もありました。心しないといけません。

タイトルで売れた好例は「世界の中心で、愛をさけぶ」でしょう。当初は「恋するソクラテス」
でしたが、編集者の判断で変更して当たりました。
政治好きには「日本改造計画」がわかり安い例です。当初の案は「夜明け」でした。編集者の
考えで、結局「日本列島改造論」を思い出させるタイトルに変えて売れました。

ネットでは誰でも習作を投稿して公開することができます。そこで気になるのは「無題」が多い
ことです。本当に習作ならそれでもかまいません。しかしマネタイズを意識しているなら無題は
ありえないと思います。シェアボタンでSNSに紹介する時「無題」では損です。紹介者が自分で
気の利いたコピーをつけなければならず、それが作者の気に入るかどうか心配で、ためらうこと
もあります。紹介してもらえる機会が少なくなります。本気なら投稿ごとに真剣にタイトルを、
売る気なら独りよがりでないタイトルを考え、反応を見て変えていく努力が必要たと思います。
「漫画けもの道」もタイトルをいくつも考えて決めました(汗)。

これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 15:12| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月15日

崖っぷちのチェンジ

編集者になりたくて出版社に入っても、異動で外されることがあります。
例えば、編集から営業に回された人も実際知っています。
私が実績を上げていれば貢献できたのに、申し訳ない、という気持ちになりました。
責任を持って担当を引き受けて下さったことには感謝しています。
異動については当事者でもないので詳述はしません。

新人で何もわからないうちについた担当編集者が連絡をくれない、打ち合わせをすっぽかす
ということがあれば、漫画家としては、無能だから捨てられたという気持ちになります。
ただ、新人だけでなく、連載漫画家にも、同じように連絡をきちんとしない、打ち合せに
出てこず家にいた、という人がいました。この場合は、問題は編集者の側にあります。
ある程度他の編集者や、同じ担当の漫画家ともコンタクトを取った方が、そうした事情が
わかるようになります。パーティなどの機会は逃さずに顔を出した方がいいでしょう。
そして、そのようなトラブルの続く人が異動になることもあります。

うまくいかない時に、全部自分が悪いと思い込んで身動きが取れなくなることがあります。
それでも、もしかしたら別の人と話してみることで事態が改善するかもしれません。
これは私自身の経験ではありませんが、担当編集者の交代を編集長に要求した人もいます。
その人は新人とは言えないもののまだキャリアは浅い若手でした。新人でも、困った時に
他の編集者、編集長に相談することが禁じられているわけではありません。
勿論、不用意に相手を傷つけない配慮は必要です。
様々な理由で、自分から担当替えを願い出る漫画家は他にもいました。

私は編集者に没にされたネームがどうしても諦められず、他の人、他の会社に持ち込んで
採用されて、結果もよかった、という経験があります。没ネームの再生は何度かあります。
セカンドオピニオンを求める権利はあります。没にした人にばれると顰蹙は買いますが、
元が没でしたから、持ち込みは自由です。金もない土壇場では、こちらは仕方ありません。
編集者も大変なことはわかりますが、恨みっこなしであってほしいと思います。
なお、私は編集者に嫌がらせをされたことは一度もありません。
それほどの者でないと言えばそれまでですが。

これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/






posted by 183 at 13:53| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月14日

おしゃべり女禁止令

この記事はある特殊経験者の偏見に基づいて再構成されたフィクションです。
特定の人物・団体とは関係ありません。

これは事実です。デビュー後まもなく、担当編集者から注意を受けました。
「デビュー前に好きな漫画家、嫌いな漫画家の話をして、嫌いな人をけなすこともあるけど、
デビューしたら同じ世界で仕事をするんだから、他人の批判や噂話をしてはいけないよ。
狭い世界だから、必ず本人の耳に入って仕事ができなくなることもあるからね。
漫画家にもおしゃべりな人はいるけど、気をつけてね。」

漫画家は閉じこもって仕事をしますし、あまり遊び歩く時間もありません。人とおしゃべり
する時間は少ないと思います。それでもパーティーやイベント、アシスタントが来ている
仕事場で、気が緩んでついおしゃべりをしてしまうことはあります。
私はスケオタを集めて楽しくおしゃべりするようにしています。誰でも入れる無難な話題で
楽しむのがいいと思います。仕事仲間ですから、私生活には踏み込まないことが基本です。
その場では黙っていても、おしゃべりを嫌ってその後寄りつかなくなる人もいます。
「何か面白い話をしてよ」と言われることもありますが、怪談など、害のない雑談がいいと
思います。自分のプライバシーはなるべく話さない方がいいですよ。

たまたま話の合う同業者と流れで踏み込んだ話をすることはあります。そこで人の噂が出る
こともありました。編集者にもおしゃべり好きな人はいます。
それでも、その場で話したことを、そこにいなかった別の人に(尾ひれをつけて)話すのは
慎んだ方が、後々問題になることがありません。1人にうっかり話したことが瞬く間に広まり
誰が噂流している、とわかってしまい、その結果絶交になった、ということもあります。
噂が嫌い、という人は特に厳しく、噂好きな人を許しません。
人間関係はやはり大切で、いざという時仕事を紹介してくれる、いい編集者を教えてくれる、
など、助けてもらえることがあります。それはお互い様ですが、キャリアの長い人ほど色々
事情に通じていて、新人を助けてくれることがあります。
知遇を得て、べらべらとその人のプライベートな噂を流せば、それきりになってしまいます。
悪意ある噂でなくても、自分の噂を流されるのを極度に嫌う人がいて、噂をすれば絶交です。

仕事より大切なおしゃべりはありません。
アシスタント同士でも、口が軽くない人の方が信用されます。
寡黙にやるべきことをやる人が仕事をもらえます。大きな声で別のアシスタントや漫画家を
こきおろすのはやめた方がいいでしょう。
他人の批判が多い人は本業が思わしくないことが多く、気を許して口が軽くならないように
注意しないと同罪になります。
私自身も失敗はありました。反省しています。

これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 11:19| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月12日

ガチ保守編集とフェミ編集

この記事はある特殊経験者の偏見に基づいて再構成されたフィクションです。特定の人物・団体
には関係ありません。

編集者なしで漫画はありません。ネットで個人でアップする分には別ですが、大手出版社で
仕事をするなら、まず担当編集者のOKをもらい、打合せしてネーム(台詞、モノローグ)に
して、編集者が会議で通して、初めて雑誌に掲載されます。競争率は高く熾烈な戦いです。
会議で勝てるかどうかは編集者の力にもよります。強い編集者が担当になると仕事が続き、
その人と離れたとたん仕事が切れることもありますが、強い編集者は頼もしい味方です。

さて担当編集者が誰になるかは新人には選択の余地がありません。そして決まってから簡単に
替えることもできません。その編集者にも個性があり、かなり柔軟な人もいれば、自分の考え
に固執する人もいます。たまたま私が知っているある編集者は、ガチ保守でした。女の幸せは
結婚だ、結婚しても仕事をしたがる女は嫌いだ、と打ち合わせで言うのには驚きました。
また、女は自立すべきだ、専業主婦なんか認めない、という自称フェミニストもいました。
しかもどちらもある程度実績があり、発言力もあります。その担当する漫画家もどちらかの色
が出てきます。そうでなければ打ち合わせで企画が通らないからです。
味方でもある強い編集者がガチ保守で、結婚至上主義の漫画を描けと言われて、それを巧みに
生かして編集者の考え以上の仕事にできる人もいれば、我慢できずにその会社から離れる人も
いました。その反対に、既婚で出産後専業主婦になり復帰した漫画家が、フェミの編集者を、
主婦をバカにするからから嫌いだと、敬遠していたこともあります。

特に発言力も実績も全くない新人は、担当が強い時には助けられもしますが苦労もします。
しかし漫画というのは、編集者と決めたテーマだけでなく、独特の絵、トーンワーク、衣装、
台詞の語彙、モノローグの詩的センス、小道具の趣味、などの表現全体が魅力になり、ファン
は、その作家のセンスにつきます。同じ人が全く違うテーマで描いた時に、離れる人もいます
が、変化を楽しむ人が多く、同ような話が続くと飽きられもします。詰まっている場合むしろ
担当替えは心機一転のチャンスでもあります。違うことをやってみるのは悪くありません。

まあ、私にうまくできていたかと言われれば、必死ではありましたが、結果は出ていません。
これからの人は覚悟して、うまくやってほしいと思います。

これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/

posted by 183 at 11:59| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月11日

迷える子羊はいらない

これからデビューしたいと思っている人はほとんど大手の賞を目指すでしょうから、大手の
体験を書いています。マイナーでデビューしてずっとプロで活躍している人、ヒットを出す
人もいますが、マイナーの新人時代はどうなのか直接知りませんので、触れません。
ただ、最初から仕事が来る、量産が求められる、という話は聞きます。
ところにより時代により事情が違いますので、あくまで一体験者の偏見としてお読み下さい。

仕事をして非常に助けられた編集者は何人かいます。熱意や能力の際立つ人がいる反面、
普通〜ちょっとやりにい、という人もいますが、助けられた人が多かったと思います。
その、普通〜ちょっとやりにくい方の人が、あけすけに本音を語ったことがありました。

どうして才能のない人ほど一生懸命持ち込みをするんだろう。一生懸命やればできると
思っているのかなあ。
いくら没にしても、次々とプロット作って持ってきて、何年も迷惑
している才能ない人がいるんだよ。でもやっと厄介払いできたよ。君はアイデア豊富で
文才があるから小説に向いている、とうまく乗せて、編集者を紹介したの。それで担当が
ついて、喜んでお礼の電話かけてきたんだよ。あ〜、よかった、これでもう相手しなくて
すむ。あ〜、よかった、よかった。プロットなんかも、ちゃんとできて面白いのじゃなく
どうしようもなくてさ、いるんだよね、仕事じゃなくて、悩み相談しに来る人が。
自殺だけはしないでね、迷惑だから。あ、あなたは近いから大丈夫そうだけど、いきなり
遠い田舎から出てきて、どうしようもないプロットにもなっていない紙切れ持ってきて、
延々と悩み相談してさ、夜中も電話かけてくる人がいるんだよ。電話があれば出なきゃ
いけないし、持込みの相手はしなきゃいけないしさ、こっちだって大変なんだから。
出版社は仕事する場所なの、悩み相談所じゃないの。迷える子羊は来ないでほしいんだよ。
行く場所間違ってるんだよね。」

この人は高学歴でまだキャリアが浅く、悩み相談に向く人ではありませんでした。
持込み担当だったので、本当にきつかったのかもしれません。

迷える子羊と言われるような人が来る理由はわからなくもありません。少女漫画が、長年、
ドジで間抜けで美人でない少女が、愛されて成長し幸せになる物語を売ってきたからです。

雑誌には編集者が名前を出す企画や漫画もあり、親しみを感じさせます。
出版社に行けば、助けてくれる優しいお兄さんがいるという幻想を抱かせます。
編集者に「抱いて」という葉書を送りつけた女性もいました。見せてもらいました。
単刀直入にお金を借りに来る漫画家もいますし、色々な苦労があるだろうと思います。

確かに親切にしてもらった編集者はいます。しかしそれは、編集者が作りたいと思う
漫画の作者として認められる圏内にいたからです。
担当が変わり、部署が変わり、退社すれば、ほぼ連絡はなくなります。
自分も連絡しなくなります。編集者とは仕事をしたいのです。
雑談も仕事のうちです。そこからそれやりましょう、という話になることがあります。
悩みのある人が出版社に相談に行っても期待外れになります。
企画書が面白ければ別です。


これ以前の「漫画けもの道」はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 12:11| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月10日

2位じゃダメなんでしょうか?

私は少女漫画と未婚・既婚向け女性漫画しか描いたことがありません。
男性向けは違うと思いますし、時代の違い、会社による違い、編集者による違いもあります。
書いているのはあくまで直接経験した範囲、或いは直接知人に話を聞いた範囲のことです。
特定の個人や団体を批判する意図はありません。
話は全て特定なしで、再構成しています。

国会議員が事業仕分けで「2位じゃダメなんでしょうか」と発言したことが批判を呼びました。
漫画では、巻頭カラーが1位と決まっています。前回低調で最下位だった人が次に巻頭で1位を
取ることもあります。また、編集者に聞いた話ですが、巻頭カラーの出来が悪く、編集部一同
「失敗だ」と頭を抱えたのに、結果的にはやはり1位だったこともありました。
「どうしよう、こんなつまらない話が1位取っちゃった」と編集者が嘆いていました。
それほど、巻頭で外すことは珍しいのです。
巻頭で外すと厳しいですが、逆に巻頭でないのに
1位を取れば、金星です。2位でも差が小さければ、受けたのは2位の作品だ、と評価されます。
つまり、巻頭カラーでなければ、2位でいいんです。
巻頭カラーの1位はほぼ決まっていますが、問題は順位でなく、雑誌が売れるかどうかです。
誰が巻頭なら売れるか売れないか、が見られています。それが仕事だと思わないとダメです。

2位と差のある3位は、初登場ならともなく、それなりの評価です。その雑誌で長くやっている
人なら、編集者から何が何位、と毎回つぶさに聞かされています。ですからアンケートを取る
コツを知っています。外せない、危ないと思い、過去のデータを総動員して外さない話を描いて
結果的に3位を取ったとしても、編集者は評価しません。「何年やっているんだ、アンケートに
甘えるな!」とこっぴどく叱られた、という話を聞いたことがあります。
口の悪いベテラン漫画家が「この雑誌で受けるのは、動物と子供と病気」とうまく言いました。
そういう傾向は、確かに、女性向けならあるかもしれません。そういう無難に受けるコツを
つかんだベテランの「何回も読んだネタ、話」は読者に受けても、編集者の期待は違います。

3位より下の順位でも、無難な計算づくの3位より、冒険している漫画もあり、それを評価して
使ってみる編集者もいます。ただし、いつも中下位でいいと甘んじてしまうのは、怠惰です。
看板を背負う気がないと、壁を破れず、よくて穴埋め、悪ければフェードアウトです。

私は1年めを過ぎた頃に3位を取りましたが、それは受けやすい設定を狙った結果でもあります。
評価されなかった理由は、今はわからないこともありません。
それでも、経験のない新人に、1年2年でトップに出ろという要求は、厳しいと思います。
事実上明日がわからない失業者に近い生活、心境です。アシスタントなどのアルバイトもあり
ますが、時間がなくなり描けなくなる、またアシスタントに甘んじてしまう恐れもあります。

デビュー前の話は、書くほどのこともありません。
思い返せば、投稿時代など居眠りしていたようなものです。
そのくらいの落差があります。
デビュー前の「私は天才」がどうなるか、経験してみると面白いですよ。

これ以前の記事はHPに一覧にしています。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 13:15| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月09日

漫画けもの道

時々ブログに書いてきた大手デビュー後の体験談を「漫画けもの道」と題して一覧にしました。
またデジコミ習作報告も、アクセスの多い記事をピックアップして一覧にしています。
ブログのカテゴリも「漫画けもの道」、「デジコミ」として、わかりやすくまとめました。
不定期更新しますので、新人の扱い、デジコミに興味のある方はチェックして下さい。
ある時代のある雑誌での新人の経験を、特定の人物団体の中傷にならないよう、一般論の中に
個人的経験を具体例として織り交ぜ、再構成する形を取っています。
今後もその形で、暴露はしません。それでもエッセンスは偽りではありません。
ただし時代、雑誌、会社が違えばまた事情は違います。
http://www.shinobumakimura.org/blog/
posted by 183 at 11:59| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月08日

競争率30倍

昨日新人時代の経験を少し書きました。やめる人もいれば、すぐ売れる人もたまにはいます。
そのどちらでもなく、何とかして描き続ける人もいます。そういう場合が多いと思います。
どこの出版社も人気作家は抑えたいので、1年2年前からスケジュールを決めてしまいます。
雑誌のページ数、掲載枠が限られている中で、すでにかなり埋められている隙間に、新人、
前年、さらに前の新人、他社からの持ち込み、などが競い合ってページを取りに行きます。
私の経験では、30倍の競争率だったことがありました。
全体が売れている時は、増刊や新雑誌を出して枠を増やすのでまだ楽ですが、それでも競争
ですし、結果も厳しく査定されます。1つの雑誌で順調に育てばいいのですが、最悪雑誌が
潰れることもあり、編集長が交代して作家を総入れ替えすることもあります。
そこで描き始めたばかりの新人は、違う雑誌に合わせてやり直すしかなくなります。
私も雑誌が潰れる経験を何度もしていますし、専属でもなかったので、新人の頃から複数に
持ち込んでいました。他流試合をした方がいいという編集者もいたので、割り切っていました。
あちこちの雑誌に描いていて、たまに見たことはあっても、どこの人だかわからない、という
漫画家がいるのはそういう事情によります。それでも弱小やエロ漫画やマージャン劇画出身で、
大手に移ってヒットを飛ばす人も、中にはいます。弱小でもヒットを出すことがあります。
大手だけにしがみついてやれる人が少ないという意味では、食えない仕事に見えるとしても、
その周辺の多くの媒体、広告も含めて、全体で、その気になれば何とか描ける生態系のような
ものができています。それが今はネットにも広がり、やりようでは他の仕事との兼業も可能です。
そこで漫画は大手だけでいい、アニメはジブリだけでいいというような、わかっていない人が
権力を持つと、困ったことになります。
エロは潰す、レディコミもエロ、漫画を広告に使うな、
という規制があったとしたら、今いるスターにも、生きてこられなかった人がいます。
ひとつの場所だけで育ち上がってずっとそこにいる人は稀だからです。
特に家庭環境が厳しい人は、とにかく金を稼がないといけない、マイナーでも仕事が続いた方が
いいということもあります。
外からはわからない事情があるのは、どこも同じでしょう。

posted by 183 at 11:41| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月07日

アンケート1・2位以外意味がない

HPのWorksの「作風・絵の変遷」に若干加筆しました。
新人時代の部分とレディコミついて少し説明を加えています。
http://www.shinobumakimura.org/works/
同じ頃デビュー数年でやめてしまった人の中にも、印象に残る作品を描いていた人はいます。
しかし残るのは大変でした。ご存じない方には、ダメだからやめた、アンケートが悪かった、
と思われるかもしれません。しかしそうでもなく、10人以上掲載され、ベテランが多い中で、
私でさえ初登場が最下位でなく、有名な先生を抜いていたと聞きました。その後も1年ほどの
間に5位、3位と順位を上げましたが、その時も次はない、という状態でした。お金も入らず
精神的に苦しく、専属でなかったので他にも持ち込みました。そこでは初登場4位だったので
担当に認められて次の打ち合わせに持ち込むことができ、かろうじて仕事がつながりました。
1位2位でないと扱いは変わらない、と言われていました。
たまたま新人がアンケートでベテランを抜いたといっても、ベテランはその人がいることで
雑誌も単行本も売れるので、簡単に新人と交代ということはありません。そういう中でも
初登場で1位2位を取ってしまう人もいて、そういう人とぶつかると掲載枠がなくなります。
中に入るとその競争の厳しさに驚きます。心理的にはデビュー前以下でした。
大手でなく、弱小でもエロも安くても数を描いて経験を積んだ方がよかったかもしれません。
やめた人は最下位だから、カスだからやめた、と見られてはつらいものがあります。
抱えている家庭の事情もあり、色々なことを考えて進路を選択していると思います。
posted by 183 at 14:31| 漫画けもの道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする